伝言ゲーム
震災後、テレビで「間違った情報に流されるのはやめよう」というフレーズをよく耳にした。実に無意味な主張だと思う。はじめからデマとわかっていれば、そんな情報に流されるわけがない。間違っているかどうかわからないから流されてしまうのである。
デマと真実を区別できる一般的かつ確実な方法があればいいのだが、残念ながらそんな都合のいい方法はない。それはオレオレ詐欺の防止法として最も効果的だったのが、結局は銀行ATMでの水際作戦であったことからも窺い知れる。普段正しく判断できる人でも,いざという時には判断を誤ってしまうものだ。
一つ言えることは、情報の内容の傾向でデマかどうかを判別することはできないということだ。悪意を伴わない、言わば善意のデマがあるからだ。伝言ゲームを思い出すと良い。情報というものは、伝達に伴ってノイズが加わっていく。ただ情報を伝えていくだけで、ノイズの蓄積により内容ががらりとかわってしまうものなのだ。その上、平凡な事実よりも、刺激撃なデマの方が拡散しやすい。そのようなデマは一見すると緊急度が高い。急を要する情報をいち速く広めてあげたいという善意によって、刺激的なデマが急速に拡散する。
ではデマと真実を区別する方法がまったくないのかというと、そんなことはない。有効な方法はある。それは一次情報の確認と、論理的な思考である。
伝言ゲームによる情報のバイアス混入を避けるためには、情報の出どころを直接確認すれば良い。こんなことは従来は困難だったが、インターネットの普及がそれを可能にした。そして情報を発信する時は、一次情報へのリンクを忘れないようにしよう。
残る問題は、その一次情報が信頼できるかどうかという点だ。これには、科学的リテラシーを磨き、論理的に思考することが有効である。特に信憑性の評価には、統計学的な考え方が重要であろう。そして学童期からのサイエンスの学習を、もっと重視するべきであろう。
問題は、それに質的・量的に見合う人材が、教育界にいるかどうかだが・・・