2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

考える葦

ヒトはコミュニケーションする動物だ。確かにヒト以外にも互いにコミュニケーションを行う動物は山ほどいる。しかし、ヒトほど複雑なコミュニケーションを行う動物は他にはいない。そして、ヒトほどコミュニケーションを必要とする動物も他にはいない。誰と…

(須野 2009) 酸性食品と齲歯

世は、健康ブームである。「〇〇が体に良い」などとテレビの番組で話題になれば、次の日にはその製品は街中の店から姿を消してしまう。最近良く話題になっている「黒酢」もそのひとつだ。一方で、黒酢が原因と思われる酸蝕歯(酸による齲歯)が最近増加しつ…

(Wegienka, et al. 2011) 動物アレルギー

幼い子供がいる場合、室内で動物を飼うとアレルギーを起こすのではないか心配になる。幼児期にアレルゲンに暴露することは、感作の可能性を高くするという考え方が、従来の主流であった。しかしこの研究では、逆に1歳未満時に室内でペットを買うことにより、…

(Daly, et al. 2011) 最も幸せな場所は最も自殺率が高い

大きな幸せが集まる場所。その場所はまた、そのような幸せを自分の手にできず、格差を感じている隣人が多い場所とも言える。幸せな隣人と自分との比較は、時には自分を極限状態まで追い込んでしまうのかもしれない。そしてそのような場所こそが、最も悲しい…

伝言ゲーム

震災後、テレビで「間違った情報に流されるのはやめよう」というフレーズをよく耳にした。実に無意味な主張だと思う。はじめからデマとわかっていれば、そんな情報に流されるわけがない。間違っているかどうかわからないから流されてしまうのである。デマと…

プログラマーの三大美徳

Perl というフリーソフトウェアのプログラミング言語がある。インタプリタではあるが処理速度はそこそこ速く、複雑な処理をすごく簡潔に書けたりする。1980年代に作られた古い言語にもかかわらず、現在でもインターネット上で広く使われていることが、その実…

(the 1000 Genomes Project, et al. 2011) 卵が先か、鶏が先か?

「卵が先か、鶏が先か」,昔から良く話題になる。生物学的には、答えははっきりしていると言っていいだろう。始まりは、「親の生殖細胞の遺伝子の突然変異」だ。それ以外の機序による可能性が全くないとは言わないが、不可能に近い。「遺伝子」という用語に…

(Grøntved & Hu 2011) TV視聴と糖尿病

テレビの見過ぎは、体には良くない。一般論としてはたしかにそのとおりだろう。しかし定量的にどのくらいのリスク増加があるのかは、今までははっきりとはわからなかった。このメタアナリシスは、それに対する一つの答えだ。ただしこの結果から、テレビだけ…

モンティ・ホール問題

量子力学の分野では、観測によって対象の状態・分布が変化してしまう。でもそれは、極限的なミクロの世界の話だ。マクロの世界ではそんなことはありえない。しかし、直感的にはそんな状況が生じるように思ってしまうことがある。「モンティ・ホール問題」は…

(Choi, et al. 2011) 母体栄養不良は子どもの糖尿病リスクを上げる

世はダイエットブームである。特に日本においては、出産適齢期の若い女性の平均BMIは低下傾向にある。また、妊娠時のカロリーコントロールは、かなり厳密におこなわれる傾向にある。この論文は、母体の低栄養状態が子どもの2型糖尿病罹患リスクを上昇させる…

第27回 日本老年学会 参加メモ

2011年6月15日〜17日@京王プラザホテル 高齢化社会の問題点 高齢化率: 現在23%、2055年には40%を越える 虚弱高齢者、要介護高齢者の増加 高齢者の実態 国民生活に関する世論調査 (内閣府 2009) 対象: 全国の成人男女 10000人 日常生活での悩みや不安 老後の…

(Kunkel, et al. 2011) リンゴと筋肉量

日本がこれから直面する「超高齢化社会」にはいくつか解決すべき問題点がある。介護もそのひとつだ。要介護状態になってしまうことを少しでも予防しようと、様々な研究が行われている。要介護状態になる原因は数多くある。その中には「筋肉の減少」も含まれ…

iCloud

スティーブ・ジョブスという男は、昔からコンセプトメーカー、ビジョナリストだった。「今ある技術を組み合わせると何ができるか」とか「顧客は今、何を求めているのか」などということには、全く関心がなかっただろう。彼の興味の対象はただ一つ、「ヒトに…

宇宙の終わり

子どもたちが幼い頃、多摩六都科学館というところへよく行った。子供向けの施設ではあったが、プラネタリウムや展示の数々は、おとなが見ても楽しいものであった。そんな派手な展示物が並んでいる隅のあまり目立たないところに、カミオカンデの光電管が展示…

第140回日本医学会シンポジウム 炎症性腸疾患 ―最近の進歩― 参加メモ

2011年6月9日 日本医師会館 UC + CD というよりも, IBD という単一疾患としての見方がより強くなったように感じた. 特に発症メカニズム,遺伝学的視点で,その傾向が強い 疫学 患者数の増加が著しい (by 特定疾患登録患者数) 潰瘍性大腸炎 (UC) 12万人強 …

ノーウィンドウの魅力

初めてMacintoshを見たときの感動は、今でも忘れられない。医師免許をとってすぐ、ワープロを買うために秋葉原へ行ったときのことだ。帰るときの車の中には、お目当てのワープロの「Rupo」と一緒に、何故か巨大な白い箱が助手席に鎮座していた。人生で初めて…

アリは勤勉か?

アリは働き者と言われている。ほとんどのアリは「働きアリ」と呼ばれているし、少なくとも、童話の世界ではそういうことになっている。でも、怠け者の働きアリというのもいるそうだ。ある研究によると、アリのコロニーの中で7〜8割は仕事をあまりしていない…

娘の誕生日

今日は娘の誕生日。どういうわけか我が子の誕生日というものは、自分の誕生日よりもはるかにうれしいものだ。別に特別なことは望んでいないつもりだけど、出来ることなら幸せな未来を築いてほしい。どんな人生でも良い。その命が尽きるときに、幸せな一生だ…

パブロ・ピカソ

私の患者たちは、私のいうことを理解し、信じ、指示に従ってくれる。自然淘汰の結果、そのような患者が残っただけなのかもしれない。でも、患者の説得に困窮したような記憶は、少なくともない。まあ、最近忘れっぽくなったせいかもしれないが。一方で、どう…

(Johnson, et al. 2007) 遺伝子変異による乳癌罹患リスクの予測

乳癌罹患リスクをコントロールする遺伝子異常は多数見つかっているが、個々の異常で臨床的に有意なリスク増加につながるものは非常に少ない。しかし個別のリスクが低くても、多数の異常があればトータルの罹患リスクは無視できなくなる。このような、個々の…

RandomSurvivalForest

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愛用している RandomSurvivalForest パッケージが、もう一年間も更新されていない。 Ishwaran のページによれば、もうすぐ randomForestSRC (Survival Regression Classification) パッケージが出るから待てということらしいが、 Coming soon 状態から、かれ…

(Pharoah, et al. 2002) 遺伝子変異と乳癌リスク

多遺伝子モデルの下では、疾患罹患リスクの分布は対数正規分布になる。ということは、おそらく相対死亡リスクの分布も対数正規分布なのだろう。死亡という事象は、各個人に対し1度しか生じない。このため、各個人の相対死亡リスクを直接測定することはできな…

輪廻転生

日本は、障害者を育てにくい国だと思う。それにはいろいろな理由があるだろうが、日本に古来から深く根づいているさまざまな文化も大きく影響していると考えている。その最大の原因は、おそらく仏教の伝来にあるだろう。釈迦は、原因(因)だけでは結果(果…

(Wray, Goddard & Visscher 2008) 疾患の遺伝子リスク

多くの疾患は、複数の環境要因と複数の遺伝子要因により罹患リスクが決定される。ある個人のゲノムをすべて解析することにより、様々な疾患の罹患リスクを正確に推定できるようになるのは、時間の問題であろう。そんな時代が来たとき、あらゆる疾患に対する…