第140回日本医学会シンポジウム 炎症性腸疾患 ―最近の進歩― 参加メモ

http://www.sksp.co.jp/website/niigata-u/su1/society_and_seminar/photo/59/0425160028.jpg2011年6月9日 日本医師会

  • UC + CD というよりも, IBD という単一疾患としての見方がより強くなったように感じた.
  • 特に発症メカニズム,遺伝学的視点で,その傾向が強い

疫学

  • 患者数の増加が著しい (by 特定疾患登録患者数)
    • 潰瘍性大腸炎 (UC) 12万人強
    • クローン病 (CD) 3万人
    • 男女比は1:1
    • 罹患率自体が増加
    • 若年で発症しやすく、完治しにくいため、有病率はどんどん増加
    • 高齢発症も少なくはない
    • 欧米と比較すると、有病率はまだ少ない
  • 特定疾患は、もともと5万人程度までを想定
    • UC、パーキンソン病はこの限度を超えているため、今後認定条件の見直しが行われる可能性が大きい。
  • 家族内発症
    • UC, CD 数%以下 (UC同士、CD同士とは限らない)

病態

  • 正確な病因は今だ不明
  • 根治は困難だが,生物学的製剤により可能性は見えてきた
多因子説: UC, CD で共通の仮説
  • 遺伝因子・環境因子 → 免疫異常・腸内細菌 → TNFα↑、発症
  • 遺伝因子
    • GWAS等により、遺伝的素因の解明は進行中
      • オーダーメード治療の可能性
    • 関連する疾患感受性遺伝子は多数 (腸内細菌レセプター、サイトカイン産生など)
    • 日本と欧米とでは、かなり異なっている
  • 環境因子
    • 食事 (悪化因子: 動物性蛋白、砂糖、脂肪、予防因子: 日本茶、野菜、果物)
  • 免疫異常
    • 胸腺の異常
    • 制御性T細胞異常 → Th1、Th17 活性化 → 悪化
    • Treg 活性化 → 予防的
    • モリーT細胞が記憶 → 緩解しても記憶が蘇ると再燃、メモリーT細胞を移植すると発症
  • サイトカイン
    • 悪化因子: TNFα
    • 粘膜修復: HGF → 治療への応用
  • 腸内細菌叢
    • 大腸は小腸の100倍
    • 腸炎発症モデルマウスは、無菌状態では発症しない
    • 発症マウスと Wild Type を一緒に飼うと、IBDが「水平感染」する!
  • 特定の細菌が特定の免疫細胞を支配している
    • SFB → Th17 を誘導
    • クロストリジウムレクティム → IL10 を誘導 (UC では減少)

治療

  • 5ASA
  • ステロイド
  • 免疫抑制
  • 生物学的製剤 (レミケード、インフリキシマブ)
    • IBD治療における画期的な進歩
    • 現状の投与法では、投与中止により再発
    • むしろ早期投与により、完治の可能性が出てきた → 中止も可能?
    • 効果減弱が問題
  • 白血球除去
    • 副作用が少ない
  • 内視鏡的拡張術 ← ダブルバルーン内視鏡
    • 高い手術回避率
  • プロバイオティクス・プレバイオティクス
  • 外科的手術
    • 従来からの変更点はほとんどない
    • 件数は横ばい
    • 課題点: 高い再手術率、短腸症候群、吻合部潰瘍・狭窄
治療法の選択肢が増加 → エビデンスを元に,ガイドライン再整備が必要
根治へ向けての展望
  • 免疫記憶細胞のリセット
  • 腸内細菌のリセット

合併症

  • 原発性硬化性胆管炎
  • 強直性脊椎炎
  • 壊疽性膿皮症
  • 癌 (特にUCでは内視鏡等での発見が困難) → 絨毯爆撃的な生検で前癌病変を発見し,手術