モンティ・ホール問題
量子力学の分野では、観測によって対象の状態・分布が変化してしまう。でもそれは、極限的なミクロの世界の話だ。マクロの世界ではそんなことはありえない。しかし、直感的にはそんな状況が生じるように思ってしまうことがある。「モンティ・ホール問題」は、そんな例の一つだ。それはこんな課題だ。
今,あなたの前に三つのドアが並んでいる。一つのドアが当たりで、残りの二つはハズレだ。
あなたは、三つのドアの中からまず一つを選ぶ。
モンティーが残りの二つのドアのうち、一つを開ける。そのドアはハズレのドアだ。
ここであなたには選択権が与えられる。最初に選んだドアを選び続けるか、残りの一つのドアに変更するかだ。
あなたは別のドアを選び直すべきだろうか?
多くのヒトは、正解である確率はどちらのドアも等しく1/2であり、選択を変更してもしなくても当たる確率は変わらないと直感的に考える。そう考えるのは,一般人だけとは限らない。写真のポール・エルデシュという数学者もそう考えた。彼は確率論を専門としており、生涯に1500編も論文を発表している。だが、事実は違う。
最初に三つのドアから一つを選んだ時点で、それが正解である確率は1/3だ。これに異論を唱えるヒトはいないだろう。そして、その後の観測でどんな情報が追加されようが、その事実は変化しない。そのドアが正解である確率は1/3のままだ。したがって正解は,「あなたはドアを変更すべき」だ。変更することによって,正解を選ぶ確率は2倍に増える。
われわれはしばしば直感に騙される。そしてそれが人間というものだ。
To error is human, to forgive divine.