第20回 日本脳ドック学会総会 参加メモ

http://jsbd2011.umin.ne.jp/images/mein.jpg
【無症候性未破裂脳動脈瘤
・全般的に、まだエビデンス不足
疫学調査 (UCAS Japan, UCAS II) が進行中

●疫学
脳ドック受診者の4-5%に認められる: 診断精度向上により、上昇傾向
・女性に多い
・60歳前後が多い
・部位は中大脳動脈第一分岐部 (MCA)、内頸動脈後交通動脈分岐部 (IC-PC) が多い
・高齢者ほど大きい傾向
◎発症危険因子
・高血圧 (OR 2.0)
・糖尿病 (OR 2.2)
・喫煙 (OR > 5)

●予後
クモ膜下出血脳出血発症の危険因子
・破裂率: 1-2%/人年
・破裂による死亡率は30%、生存例も高率に後遺症を残す
◎破裂危険因子
○瘤径
・5mm未満: 0.36-0.96%/y、5〜7mm: 1.68%/y、7mm以上: 3%/y (RR 3.4)
・小さいと破裂の危険は低い
・大きいと治療が困難
○形状
・形状変化すると破裂しやすい
・ブレブがあると破裂しやすい
○併存症、治療の有無
・高血圧、糖尿病、(高齢)
・通院加療中: 0.7%/y、放置: 1.14%/y
○部位
・小さくても前交通動脈 (ACom) は破裂しやすい
○サイズ比
・瘤径そのものよりも、血管径とのサイズ比(SR)が重要な可能性がある
・SR <1.5: < 0.5%/y、SR > 2.0: > 1.0%/y
○家族歴: RR 2.5
○喫煙: RR 6.4
○多発例
◎課題
・低リスク例のフォローアップは保険診療? 脳ドック?

●治療
○血管内手術: コイル塞栓
・増加傾向(30%程度)
動物実験では、コイルでは血栓化は起こらない!
・圧低下が主な作用機序?
・術後瘤拡大や coil compaction を起こすことがある
○開頭術: クリッピング
・減少傾向
・小型動脈瘤はコイルへ移行
・大型は合併症が多い(ネックが広いため、かけ直しやマルチクリップが必要)
・合併症率は低いと言われてきたが、高次脳機能障害・無症候性脳梗塞などまで含めると20%程度
・クリップ部位の破裂: 0.2-0.5%/y
・クリップ後の新生動脈瘤破裂: 0.5-1.0%/y
○術後評価
・modified Rankin Scale: mRS: 長期的転帰の指標
0 - 全く症状なし
1 - 何らかの症状はあるが障害はない: 通常の仕事や活動は全て行える
2 - 軽微な障害: これまでの活動の全てはできないが身のまわりのことは援助なしでできる
3 - 中等度の障害: 何らかの援助を要するが援助なしで歩行できる
4 - 中等度から重度の障害: 援助なしでは歩行できず,身のまわりのこともできない
5 - 重度の障害: ねたきり,失禁,全面的な介護
6 - 死亡

◎展望
○薬物による拡大、破裂の防止
動脈硬化の抑制: スタチン(破裂のOR 0.28、AIM
・NF-κΒノックアウトマウスでは動脈瘤ができない
○aneurysm dormancy therapy

【無症候性脳梗塞
●意義
○症候性脳梗塞発症危険因子 (OR: 8.8)
脳卒中発症率:1.87%/年
○認知機能障害危険因子

●危険因子
・高血圧
・糖尿病
・心房細動
・喫煙
・飲酒
・独居、単身赴任

●分類
ラクナ梗塞
・アテローム血栓性梗塞

●治療
・降圧
○展望
・幹細胞移植: 損傷部位への直接移植、経静脈投与

【無症候性大脳白質病変】
●意義
脳卒中発症危険因子 (OR: 10.6)
・認知機能障害の危険因子

●分類
○脳室周囲病変 Periventricular Hyperintensity: PVH
脳卒中 HR: 4.7
○深部皮質下白質病変 Deep and Subcortical White Matter Hyperintensity: DSWMH
脳卒中 HR: 3.6

●危険因子
・加齢
・高血圧
メタボリックシンドローム
・血中総ホモシステイン高値

【頭痛】
・機能性脳疾患: 他にてんかんなど
●分類
○日常的に起こる頭痛: 二日酔い、アイスクリーム頭痛
○一次性頭痛
片頭痛: 8.4%
・緊張型頭痛 (今は筋緊張型頭痛とは言わない): 22%
群発頭痛: 0.05%
○二次性頭痛: 器質性疾患 (脳や全身の病気) によるもの
・頭蓋内疾患: くも膜下出血脳出血、脳腫瘍、髄膜炎
・頭蓋外疾患: 眼、耳、鼻、歯
・全身性疾患: 熱性疾患、褐色細胞腫

片頭痛
○症状
・日常生活に支障をきたす、体動で悪化
・月2〜3回〜数年に1回
・一側が多い
・拍動性
・悪心、嘔吐
・30〜40代女性に多い (13%)、閉経後にも認められる
・ストレスからの開放時(週末: weekend headache)、月経前後の発症が多い、1〜3日間
閃輝暗点: 芥川龍之介「歯車」
○治療
・発作急性期治療: セロトニン作動薬(トリプタン)、ドーパミン作動薬、制吐薬(ナウゼリンプリンペラン)、ジヒデルゴット、 鎮痛薬(クリアミンA) (NSAIDs連用は避ける)
・発作予防治療: Ca拮抗薬(ロメリジン)、抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム)、β遮断薬(プロプラノロール、アテノロール)、三環系抗うつ薬(トリプタノール)、ペリアクチン(小児) など

●緊張型頭痛
○症状
・性差なし、中高年
・頭を締め付けられるような頭痛、肩こり
・毎日のように起こる
・日常生活への支障はない、体動による悪化はない
・悪心・嘔吐はない
片頭痛との合併例もある
○治療
・ストレスコントロール
・姿勢の是正、運動
・中枢性筋弛緩薬、抗うつ薬抗不安薬、循環改善薬

群発頭痛
○症状
・一定期間、一定の時間(1〜2時間)に起こる
・1〜数年に一回
・その間は、アルコール、NTGでも誘発
・20〜30代、男性 (男女比5:1)
・片側の眼の奥をキリでえぐるような痛み、ぶつけたくなるような痛み、じっとしていられない (三叉神経痛とは違う)
・ホルネル症状、流涙、結膜充血、鼻閉、鼻汁
○治療
・発作急性期治療: トリプタン、酸素吸入 (7L, 15min)、酒石酸エルゴタミン
・発作予防治療:

認知症
●危険因子
・ApoE4、貧困、高血圧、糖尿病

●予防因子
・学歴、降圧治療、運動、栄養、睡眠