「◯◯で××円儲ける」

よく、「◯◯で××円儲ける」という類の本を見かける。よく見かけるということは、その手の本がそこそこ売れているのだろう。見かける度に、不思議な気持ちになる。

まず、具体的な収益額が設定されていることに違和感を感じる。たとえば題名が「薬屋になって1億円儲ける」とか「八百屋になって三千万円儲ける」といったものであれば、そんな本は誰も買わないだろう。一般的な事業の収益は数多くの要因の影響を受け、結果として偶然に左右される。収益額が予測できるような一般的な方法などまず存在しないということが、大抵の人は理解できるだろう。

ところが事業の対象が株やFXとなると話が違う。それらは一般の人にとってはブラックボックスなのだ。収益を予測できるような魔法の方法があるように錯覚してしまうかもしれない。つまりこのような本が売れる理由として、「理解の不足」を挙げることができる。

出版の動機にも、不純さを感じる。仮にそのような必勝法が存在すると仮定しよう。私なら絶対に公表しない。特にFXはゼロサムゲームである。自分と同じ戦略のプレーヤーが増えるほど、収益は低下する。何を好き好んでそんな選択をするだろうか? つまりそのような書物に書かれた方法では、もともと大した収益は得られないのだ。少なくとも、本の印税による収益の方が大きいはずだ。

それではそのような本を読む価値はまったくないのであろうか? いや、そうではない。そのような本を読むことによって、取るべきではない戦略を学ぶことができるからだ。その戦略では、十分な収益は得られない。

結論:「◯◯で××円儲ける」というテーマの本はできるだけ読むべし。そしてそこに書いてある方法は、絶対に実行してはならない。